9.19(木)自分探し
2024年9月19日(木)
生徒の皆さんへ
「自分探しは時間の無駄」
苦しいとき、ただ他力本願で救いを求めるのは、病気になったときに薬だけを頼るようなものである。たいがいの場合は薬だけではどうにもならず、結局のところ自分の節制の努力と自然治癒力が回復の鍵となる。自分の身体が健康になろうとしない限り、薬は効かないのだと思う。
まずは強い意志を持ち、自分で苦難を乗り越えよう、立ち直ろうと努力しなくてはいけない。自分が進む道で行き詰ると、往々にして人は、今の自分とは違う自分を設定したがるものである。そして、悩み苦しんでいる自分は本当の自分ではなく、理想とする自分はどこか別のところにいるような錯覚に陥るのだ。
そしてまた、「自分探し」や「新しい自分と出会う」というような誘い文句が巷間にあふれているものだから、それらに騙されて、さっさと進路を変更してしまったりする。
進路変更や転職が好結果をもたらすことも少なくはないが、私の周囲を見ていると、進路変更や転職が癖になって、いつまで経っても腰の落ち着かない人がいる。ありもしない「真の自分」、あるいは「本当の自分の居場所」を延々と探し求めているように見受けられるのだ。
仕事でも学習でも、入門期が過ぎたあたり、次は初級から中級に向かうあたりで、本当にこれが自分の進むべき道なのかと多くの人が悩む。そして、他の職業、他の専門分野が急に魅力的に見えてくる。フランスに行ってソムリエになるための修業をしたら素敵だろう。法律学の研究を止めて精神医学を専門にしたら道が開けるのではないか等色々考えるのだ。
だが、思い悩んでいる自分以外に真の自分がいないことだけは、しっかり心に刻んでおくべきだと思う。多くの場合、「自分探し」は時間の無駄である。虚構の自分を探し歩くより、日々自分がなすべきこと、目の前にあることを一つ一つ丁寧にこなしていくなかに真の悟りがあるからだ。
校長 中村三喜