12.18(水)幸せに形はない

12月18日(水)
生徒の皆さんへ
 

幸せに形はない

 形ある幸せを求める。そんな時代が確かにあった。高度成長期の70年代やバブル崩壊前の時代には、有名校への進学が大企業への就職を約束し、幸せな人生を保証した。
 新しい便利なモノが増え、食卓も豊かになった。人々はこぞって電化製品や車を買い求め、庶民にとってマイホームも夢ではなくなった。まさに目に見える幸せというものがそこにあり、幸福感がとても単純に規定できた時代であった。
 しかし今、幸福の形は見えにくくなった。モノがあるのは当たり前、豊かな食事も当たり前、有名校への進学、大企業への就職も、必ずしも幸せな人生を約束しなくなったのだ。それだけに、モノや形の豊かさから、人として真の幸せは何かを探し求める時代に移っているのだ。
 そして、幸せに暮らす第一条件に人々は健康を挙げる。もちろん健康であることはとても大切なことであり、何ものにも代えがたいものであることは確かだ。しかし、健康な人はみんな幸福なのだろうか。病気をしている人はすべて不幸なのだろうか。人生の終わりには、誰でも健康を返上しなければならないのだ。
 障害児を持つ親御さんからよく聞くことがある。「この子のおかげで、本当の幸せとは何かが分かったような気がします」「この子がいたからこそ、夫婦の強い絆が生まれました」と。
 家族の中に障害者や病人がいることは苦労の多いことでもある。しかしながら、その苦労の共有こそが家族の心を一つにするのである。形には見えない幸せなのである。

校長 中村三喜

一覧に戻る