12.19(木)才能・個性

12月19日(木)   
生徒の皆さんへ
 

「謙虚な気持ちが才能や個性を導き出す」

 たとえば、才能や個性といった言葉がある。自分にはこんなにも才能があるんだとひけらかす。自分はこんなにも個性的な人間なんだとアピールする。特に若い頃はそうかもしれないが、それはどこかに虚像がある。謙虚さを持たない才能や個性は、どこか独りよがりの臭いがする。
 たぶん才能や個性というものは、自分自身が意識して表現できないものなのではないか。それは受け取る側が認めるものではないのか。
 それらを一生懸命になって見出そうとしている人がいる。あるいは自分にはそれがないと嘆いている人がいる。
 しかし、才能や個性はまったくない人など、この世にはいない。皆それぞれに与えられたものがある。そして、それをちょっと覗かせてもらうには、やっぱり謙虚な気持ちが必要だと思う。
 私たちは確かに「今」という時間の中で生きている。でもその生き方は、必ず過去の記憶に左右されているのだ。忘れがたい素晴らしい記憶や、消し去ってしまいたい記憶を抱えながら「今」を生きているのだ。
 そして、人間は無意識のうちに、自分に都合いいように記憶を作り変えてもいる。そうでなければ生きていけないからだと思う。受け入れがたい記憶があったとしても、少しそれをアレンジすることで気持ちが楽になったりもする。楽しかった記憶を膨らませることで、明日の答えが見つかったりすることもある。
 今どんなに辛くとも、その苦しみを解きほぐしてくれる答えは必ずある。自分の歩くべき道が分からなくなった時も、それを教えてくれる道標はきっとある。そして、その一人ひとりの人生の解は、今は見えてないが自分の心の手帳にちゃんと書かれているのだ、と思う。

校長 中村三喜

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