12.27(金)体感
12月27日(金)
生徒の皆さんへ
「体感」
絵を描くとき、同じ景色でも、写真を見て描いたのと、その場に行って描いたのとでは、できあがった絵の与える印象がおのずと異なるという。
実際の景色を見て、肌で風を受ける。草の匂いを嗅ぎ、鳥の声を聞く。書き手がそうした全身に感じたものをキャンパスに描き出してこそ、作品に命が吹き込まれ、観る者の心を打つというのである。
最近は情報技術が発達し、世界中のさまざまな文物を居ながらにして見聞きできる。たとえば、テレビで大自然の景観が紹介され、その壮大さに思わず息を呑むことがある。しかし、いかに鮮やかな4Kや8Kテレビの映像でも、実際にその地に立って体感するほどの迫力は伝えられまい。
そうしたことは他の場合でも言えるだろう。例えばアフリカの貧困問題について100冊の本を読んだとしても、一度現地を見て理解したことには及びもしない。モノの本質を知るのは、五感を働かせ、味わうことが欠かせない。何ごとにおいても、じかに見て、聞いて、触ってみなければ分からないもの、現地、現場でしか感じられないものがあるのである。
お互い、間接的に見たり聞いたりしただけで、分かったつもりになっている気になっていることはないだろうか。
校長 中村三喜